かなしい皇居めぐりや -うた- [短歌]

この土も母との暮らし染みている朝顔咲くを愛でし葉月よ

この世ごときめねばならぬ夜なのにうたの遊びに憑かれておりぬ

双子っこあやす隣家のしあわせを聴けば父母ひたに恋しき

青紫蘇のまびき菜かめばしあわせもほのかに香る母よ元気か


涸れうたをうたうしかない夜もある父よ今ならわれにどう云う



こころ病むゆえに旅などかなわなき母を連れ来ぬ皇居見物

長女とはもう暮らさないという母と娘になるとは知らぬ二人の旅行

あの秋のさみしき十月二十日なり母娘ふたりの皇居見物

眠ってるように思えど美しと母言うクロマツの樹々、森を

外苑をカタカタカタと車椅子日比谷で和風パフェを二人で
(短歌研究11月号 うたう☆クラブ入選 加藤治郎コーチ選)

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